登場人物一人ひとりが際立つ 『七つの会議』

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    池井戸作品の文庫はあらかた読んだかなと思って
    いたら、『七つの会議』(集英社文庫)が抜けていた
    ことに気づき、読んでみました。
    来年は映画にもなるようで、それぞれの立場の人の
    見せ場があるので、主役級をバンバン出しやすい
    作品だとおもいました。
    http://nanakai-movie.jp/

     

    連載当時は、七つの会議だったようですが、文庫化で
    加筆したそうで、八章の構成になっています。

     

    昼行燈のような万年係長、親のネジ製作所を継いだ
    小さな会社の社長、不倫を清算して新しい道を行く
    女性社員など、個々のそれまでの人生や価値観などの
    説明があり、章ごとでそれなりに完結しつつも、
    メインの舞台となる電機メーカーで起こっている
    不祥事が明らかになっていく展開。

     

    事の起こりは、エリート営業課長がパワハラ問題。
    そのパワハラ事件には裏があったことが次第に
    明らかになっていき、後半はその問題の解決に誰が
    どう動くのか、おそらくあの人だろうとわかって
    いても、どうしたらその人の立場で親会社が動くよう
    働きかけるのか、その手段も見どころとなります。

     

    他の池井戸作品を読んでいると、各章や設定部分など、
    人気作品と通じるところがあって、オールスター的な
    エンターテインメント作品でした。

     

    パワハラ事件を起こしてしまった課長の家庭環境が
    後の方で語られる構成も良かったです。

     

    コメディ的要素で楽しめる 『民王』、クライムサスペンス
    的な 『株価暴落』 と並んで、池井戸カラーがあまり
    強いものは苦手という人でも楽しめると思います。

     

    ちなみに、私はもし池井戸作品を一冊選べと言われたら
    『民王』 ですね(笑)。『陸王』 でなく。
    総理大臣とそのバカ息子が入れ替わるという設定で、
    総理が就活で日本の企業姿勢をあらためて考えたり、
    バカ息子が国会で失言・暴言・読み間違いしながらも
    政治家たちやマスコミを見る目がピュアで新鮮。
    何度読んでも 「大人になろうぜ」 のシーンは好きです。

     

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    三者三様のエゴが入り乱れる 『ユートピア』

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      湊かなえさんの 『ユートピア』(集英社文庫)を
      読んでみることにしました。湊かなえさんなので、絶対
      登場人物が理想郷を得られるはずがないのはわかって
      いるだけに、落としどころが楽しみでもありました。

       

      舞台は、何もないのどかな海辺の町で、都会人が観光で
      訪れればユートピアのように見える世界。
      そこに住む、それぞれ生きてきた環境も、世界観も異なる
      女性3人が、自分の存在価値を見出そうともがきながら、
      自分なりの理想世界を求める展開。
      『贖罪』 に通じるところもありますが、ややマイルドです。

       

      町で起こった出来事は、その日の内に広まってしまうような
      閉鎖的な環境でありながら、5年前に殺人事件があったと
      いう謎が冒頭で提示されるも、ミステリー的要素は二の次。

       

      主人公となる3人の女性による、ボランティア基金の活動や、
      メディアにも取り上げられるようになっての個々の自意識の

      肥大や、町起こしイベントで起こる事件、ボランティア基金の
      象徴的存在となっている少女にまつわる周囲の人たちの疑惑など、

      小さな謎が絡みついてきて、いつ5年前の事件につながるのか、
      彼女たちはどう自分に折り合いをつけていくのか、気に
      なっている内に、意外とサクッと、それほど予想外でも
      ない感じで、5年前の事件の謎が解明してしまうのでした。

       

      あくまでも5年前の事件はメインではなく、田舎暮らしと
      周囲の人のデリカシーの無さに失望している主婦、
      その地域では唯一の大手企業に勤める夫を持ち、同じ
      企業でも現地採用の夫を持っている奥様連の中では
      自分がワンランク上の人間だと思っている主婦、そして
      自分の陶芸の才能についてはかなり過大評価している
      割に生活力がない女性、その3人のエゴや同じ出来事を
      それぞれの視点でどうとらえているかが面白さだと
      思いました。

       

      海辺の田舎町でなくても、「自分の不運を土地のせいに
      して、ここではないどこかを探しているだけ」 なのは、
      現状がうまくいっていない人が一様に持つ感覚。
      3人の女性はそんな “地に足を着けていない” 人ばかり
      なので、毒舌な詩人・るり子さんに一番共感できました(笑)。

       

      誰がどんな形で、その夢から目を覚ますのか、現実を直視
      する勇気が持てるのか、5年前の殺人事件や、イベントで
      起こったある事件以上に、自己過信甚だしい女性たちの
      結論がどうなるかを追うと楽しめる作品だと思います。

       

      とくに、地元民代表として描かれる菜々子の思考回路は
      感情移入ができないのはもちろん、ミステリアスと言おうか、
      理解不能と言おうか、3人の女性の中で最も恐ろしい
      メンタルの持ち主で、この町にいつまでも隔離してほしい
      と願うばかり。期待通り、スカッとせずに終わる作品です。

       

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      時々読みたくなる 『夜のピクニック』

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        昨日、『ミステリと言う勿れ』 について書きましたが、
        何か以前読んだ本で、似たような似てないような作品が
        あったな〜と本棚をチェックしたら、あった!

         

        『夜のピクニック』(新潮文庫)という作品で、著者は
        未だ読了できずに座礁しまくっている 『蜜蜂と遠雷』 の
        恩田陸さんの作品だったのでした。
        『蜜蜂と遠雷』 が恩田作品の初チャレンジだと思って
        いたら、読んでたのか自分…。

         

        『蜜蜂と遠雷』 はもしかすると、本の作りが私と相性
        合わないのかも。上下二段という構成が。文庫本で
        上下巻になった方が私には向いている気がしました。
        本の作りと読了意欲の関連性については、深い考察が
        必要となりそうなので、懸案事項として保留とします。

         

        『夜のピクニック』 は青春小説ですが、学園生活の
        出来事から登場人物が成長するとか、友情が生まれると
        いった展開でないのに、自分が経験していなくても
        爽やかな高校生時代をイメージさせてくれる名作です。

         

        地方の受験校らしい高校の行事として毎年行われる
        「歩行祭」 という昼夜ぶっとーしで80キロ歩き続ける
        という学校行事の間の会話が中心のストーリー。

         

        昼間は、この行事を通してやりたいことや、卒業後の
        方向や夢が語られ、日がくれると共にそれぞれの内面が
        語られていく流れも秀逸。その境目となる海に沈む
        夕日の様子も印象的です。

         

        この行事が高校生活最後となる、複数の高校3年生が
        それぞれに主役とも言える立ち位置で、個々の価値観や
        同じ道を一緒に歩いていても異なる見え方が、淡々と
        語られるので、朗読作品にも適しているかもしれません。

         

        80キロ歩く間の昼と夜の景色や空気感、そして疲労や
        休憩タイムで変化する話題やテンションなど、大きな
        事件は起きないけれど、それぞれに抱えている思いや
        秘密などが語られ、時に心霊写真事件や、妊娠事件など、
        学校内の噂の裏がひょんなことから解明したり、転校した
        友人が仕込んでくれていた魔法の意味に心温まったりと、
        読後感は良いと思います。
        私の場合は 「やっぱ、高校は男女共学だよな!」 と
        毒を吐きつつも、穏やかな気分になれる一冊です。

         

        それぞれの親の “大人の事情” による生徒同士の確執
        がどういった着地点となるのか、どういったキッカケ
        で雪解けするのか、それともしないままに高校生活の
        一大行事を終えてしまうのか、80キロのゴール以上に、
        問題を抱えた主人公・貴子の賭けの結末とゴールが
        足のマメくらいしか大きな問題とならない 「歩行祭」
        の中で、読み手にとっては先へ進む原動力となります。

         

        すご〜く感動というタイプの作品ではありませんが、
        松任谷由実さんの 「卒業写真」 のように、時々
        再読したくなるのです。

        『ミステリと言う勿れ』 とかぶって感じたのは、

        おそらく、主人公が家族の問題を抱えていることと、

        ふんわりした会話の中で、いつの間にか事件(謎)

        が解明していくあたりだったのかもしれません。


        一方で、『蜜蜂と遠雷』 はますますもって私に
        「さっさと読めや!」 攻撃でプレッシャーを与えて
        くるため、その逃避行動からか、現在、下重暁子さんの
        『極上の孤独』(幻冬舎新書)なんか読んじゃってます。


        読後はカバーの絵の色が違って見えてくる 『星の子』

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          書店に 「本屋大賞2018」 入賞作がずらっと並んでいて、
          文庫で読みたい(保存するかもしれない)作品はスルー
          して、その他の中からお得意のジャケ買いならぬ装丁買い。
          「装丁買い」 はあまりに使われない言葉なせいか、
          「想定外」 と想定外な文字が出てしまいました。

           

          そこで選んだのが 『星の子』(今村夏子著、朝日新聞出版)。
          自分自身がキッカケとなって、両親が怪しげな宗教に
          どっぷりとのめりこんで、家庭崩壊していく様と、
          そんな両親の異様さは客観的に見る視点を持ちつつも、
          子供という立場からその環境を受け入れざるを得ない
          女の子の姿が哀しい展開です。

           

          子供の幸せを願っていたはずの宗教が、いつの間にか
          長女を家出させ、給料がいい職場であったはずの損保に
          勤めていた父は職を失い、母は身なりにかまわなくなり、
          全くの本末転倒両親という点は、とくに目新しいテーマ
          ではありませんが、その状況下での主人公の心の動きが
          メインと言えるのではないでしょうか。

           

          彼らの長女のようにグレて家出してしまうでもなく、
          適度に宗教団体の活動に参加しつつ、時には学校の先生に
          憧れを持ったり、親族の法事にそこで出される食べ物が
          楽しみで一人参加してみたり、宗教に抗う部分は欠落
          してしまっているけれど、まだ宗教の洗脳から脱出が
          可能そうな “フツーの子” としての側面が描かれると
          読み手側も心が不穏にざわつきます。

           

          両親による “宗教ハラスメント” から距離を置いてくれよう
          と申し出てくれている叔父さんの元へ、自主的に逃げようと
          しない主人公。そして、宗教に否定的な行動をとる叔父の

          元へはやらないよう、おそらくある決意を持って、

          宗教団体の家族旅行に参加したと思われる両親。

           

          家族3人が宗教施設 「星々の郷」 で見上げてのやりとりと、
          旅行前に学校で配られたプリントの内容を考えてみると、
          カバーに描かれている夜空の色が変わって見え、タイトルの
          下に流れている星が不吉な結末を暗示させているような
          気がしました。

           

          宗教にハマりまくっていく話の方が、意外と宗教が持つ
          狂気は描き切れず、読み手にとっても別世界過ぎて気楽
          かもしれません。…と不安だけ煽って、突如終わり。
          抗生物質がそろそろ効いてきたようです。


          『鍵のない夢を見る』 のバグった夢たち

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            いろいろな書店で、オススメ本として 『かがみの孤城』
            (ポプラ社刊)が店頭に置かれている辻村深月さんの
            本と言えば、映画になった 『ツナグ』(新潮文庫刊)
            くらいしか読んでいなかったので、直木賞受賞作の
            『鍵のない夢を見る』 を読んでみました。

             

            女性が主人公となっている5つの短編集で、それぞれの
            タイトルに “泥棒・放火・逃亡者・殺人・誘拐” と
            やや物騒な単語が散りばめられており、帯を見ると
            “5人の女たちの夢と転落” とも書かれていたので、
            少なくとも明るい話ではないなと思って読みましたが、
            うん、たしかに暗い!

             

            主人公の一人称スタイルなこともあって、主人公目線で
            その成り行きを共に追いかけるものの、感情移入できない
            距離感が、不思議な感覚です。

             

            とくに、“放火・逃亡者・殺人” の主人公たちは
            パラノイア的な要素があって、事件の全容がわかると
            まるで仮想の相手に翻弄されたかのような結末に。

             

            “鍵のない夢” というよりも、夢へのアプローチに
            バグった女性と、主にだめんずな男たちの話です。

             

            中でも 「芹葉大学の夢と殺人」 はミステリー調で、
            相手の男性も本作の “キング・オブ・だめんず” で
            一番納得のいくラストでした。

             

            「仁志野町の泥棒」 は、主人公よりもその対象と

            なっている女性の方が理解不能。さらに、それでも

            付き合い続ける人の気持ちもわからん!

            その割に、一編の作品としては好きな気がします。

             

            “誘拐” 編については、同じように自分を追い詰めた
            結果による事件ではありますが、私自身、占いを

            やっていて、かなり近い精神状態に陥る人から

            この状態に近い話も聞いているし、ここまで大事に

            ならなくてもそれに近い行動を取ってしまいそうな

            崖っぷちにいる人の相談も受けたことがあるので、
            女性たちの “鍵のない夢” とは少し違うかも。

             

            巻末に著者と林真理子さんの対談が収録されており、
            ここまでがワンセットの作品だと思います。

             

            読書は、自分が持っていない価値観や物の見方を
            与えてくれますが、ここに登場する女性たちの考え方
            はできれば着信拒否したいような、ちょっと腰が
            引けてしまうような、純度は低いけれどじわじわと
            効いてくるような毒があります。

             

            はてさて、『かがみの孤城』 は単行本で読むべきか、

            文庫化を待つか、微妙なところです。

             

            【関連記事】
            ◇生者と死者の仲介人 『ツナグ』
            http://nureinmal.jugem.jp/?eid=1467
            ◇切なくも爽やかな仕上がりの映画 『ツナグ』
            http://nureinmal.jugem.jp/?eid=1502


            映画鑑賞前に原作を読んでおいた方が楽しめる 『羊と鋼の森』

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              「2016年本屋大賞」 となった 『羊と鋼の森』
              (宮下奈都著、文春文庫)。
              装丁の絵も、内容をよく理解した上で、その世界観を
              表現している、すばらしい作品だと思います。

               

              ストーリーは、裏書を丸写しすると、「高校生の時、
              偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に
              見せられた外村は、念願の調律師として働き始める。
              ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性
              豊かな先輩たちや、双子の姉妹に囲まれながら、
              調律の森へと深く分け入っていく――。一人の青年が
              成長する姿を温かく静謐な筆致で描かれた感動作」。

               

              これだけだと、若者が仕事を通じて、同僚や顧客との
              ふれあいを通して成長するという、ありがちな作品に
              思われますが、まず、文学では表現が難しい “音” が
              感じられるような、言葉選びによって書かれた静謐の
              中に、刻まれていく美しい言葉の流れ。

               

              作品の文字、一つひとつが音楽を奏でるような、そんな
              作品なのです。将来的にも、BOOKOFF行きはないと
              言い切れる作品!

               

              また、主人公の外村は北海道育ちで、信念はあるけれど、
              どこかつかめない空気のような、無垢な魂を持った
              青年で、調律師の仕事を通して “成長” というより、
              周囲の人が持つ価値観や仕事への取り組み方から、
              さまざまなことを “吸収”し、小さな木の芽が森へと
              広がっていくような、不思議な感覚にとらわれます。

               

              相手が求める音という抽象的な要望となる音を提供
              したいと考える先輩・柳、音大のピアノ科に行って
              ピアニストを目指したものの挫折して、弾く人の
              レベルに合わせ、時には手抜きにも感じられる調律を
              する先輩・秋野――調律師は技術や実績だけでなく、
              調律をする上でのスタンスやポリシーで作り上げる
              音が変わる世界に、正解はなく、外村自身が技術だけ
              でなく、自分が求める調律の域を探っていく過程も
              この作品の見どころだと思います。

               

              それだけに、彼の中に育まれている北海道の自然の音、
              おそらくは心の変化を象徴するような曲など、映画
              ならではの表現には期待が高まります。
              http://hitsuji-hagane-movie.com/

               

              彼の人生観、行き着きたい場所に “気づき” を
              もたらす双子の姉妹との出会いと、その後の事件に
              よる心の変化については、映像では表現が難しいと
              思われることと、外村の内面を知っている状態で
              映画を観た方が感動が大きい気がします。

               

              “美しく、善い” ピアノの中に住む羊の世界が、
              同作を通じて、静かに語られることでしょう。


              『火星に住むつもりかい?』 は伊坂版・昆虫すごいぜ!

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                伊坂幸太郎さんの作品は、登場する人物も魅力的だし、
                異色な設定もあったり、どんでん返しもあったり、
                さらには、登場人物が交わす会話の中に、心に残る
                ひと言があったりと、文庫化を心待ちにすることも
                少なくないものばかり。

                 

                いろいろ読んできましたが、『オーデュボンの祈り』
                『アヒルと鴨のコインロッカー』 といった有名作品
                が、やはりマイフェイバリットの上位です。

                 

                最初に読んだのが 『オーデュボンの祈り』 なことも
                あって、インパクト&読後感、共にNo.1ですね。

                オススメ作品とも言えます。

                 

                『ゴールデンスランバー』 もストーリーテリング的

                には面白いのですが、厳選された言葉というか、

                カッコいいセリフとというか、登場人物の魅力を

                感じさせてくれる言葉の数的に、前述の2作の方が好き!

                映画は観ていないけれど、映画化には向いている作品

                だとは思います。また、“初めての伊坂作品” として

                何を読むべきかと問われたら、『砂漠』 も入りやすい

                作品なのではないかと思われます。

                 

                で、『火星に住むつもりかい?』(伊坂幸太郎著、
                光文社刊)は、作家&タイトル買いしました。

                 

                内容の予想がつきそうで全くつかないタイトルの
                つけかたも、妄想が掻き立てられ、また魅力。

                 

                舞台は、危険人物を排除するという名のもとに作られた
                「平和警察」 に守られているはずの世界。
                とはいえ、危険人物と認定される人物は本当に危険なのか、
                他社の悪意による密告によるものかわからない、中世魔女
                狩りや、スターリンの粛清時代を思わせる社会。

                 

                冒頭は、危険人物を一般大衆が作っていく禍々しさや、
                突然自分自身が危険人物認定されてしまう恐ろしさ、
                そして、拷問や公開処刑など、なかなかハード。

                 

                そんな監視・密告社会の中、危険人物とされた人が
                謎の黒ずくめの “正義の味方” に救われ、平和警察と
                しては顔に泥を塗られる事件が始まります。

                例えれば、『名探偵コナン』 の犯沢さん・つなぎ

                ファッションといった感じのヒーローです。

                 

                そんな “正義の味方” を見つけ出すため、派遣された

                捜査官・真壁は、次第に “正義の味方” の手がかりを

                つかんでいき…と、読みつつもどちらかというと

                “正義の味方” がつかまらないでほしい思いと、

                虫オタ・真壁の飄々とした魅力にも揺れつつ、事件は

                意外な展開に。

                 

                所々で挿入される床屋の情景が、作品の流れに応じて
                そこから得たいと思う情報が自分の中で変化していくのを

                認識しつつも、どこをチェックすればいいのかわからない

                感じがまたイイ!

                 

                そして、ディストピアとなっている 「平和警察」 管轄の
                社会を根本から壊してくれる人が登場するのか、こちらも
                どういう落としどころがあるのか模索していたら、違う
                光が差し込んできて、探し物が見つけられるような作品。

                 

                章の区切りごとに挿入される、死神のカマやアリ、ハサミの

                シルエットマークも、再読するとさらに深い意味を持って
                いたのに、気づかされたのでした。

                 

                なぜ、秘密警察の捜査カテゴリがアリなのか、地道な
                捜査という意味なのだろうかと勝手に決めて、途中から
                慣れてしまい、考えることを放棄していた自分にも
                気づかされました。

                とにかく、クセになりますね、伊坂ワールド。

                 

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                興味の域で留めたい 『一般人は入れない立入禁止地帯』

                0

                  『STAR WARS』 に出てくる、ファースト・オーダーの
                  装甲トランスポートAT-ATを、近頃までイギリスの
                  「マンセル要塞」 がモデルだと思っていたのですが、
                  ゾウがベースと知り、愕然とした私です。

                   

                  そんな 「マンセル要塞」 が表紙の 『一般人は入れない
                  立入禁止地帯〜危険度MAX版〜』(彩図社刊)という、
                  コンビニで売ってる冊子を見つけたので、気弱な小市民の
                  私は、怖いもの見たさで購入しました。

                   

                  軍事機密系や地形的に困難なエリア、歴史的・文化的に
                  立ち入れないエリア、生命の危険を保証できない治安の
                  エリアなど、ほとんどがまさに危険度MAXなのですが、
                  「コカ・コーラのレシピ保存庫」「バッキンガム宮殿の
                  女王の寝室」 など、危険性よりその背景が興味深い
                  場所や、絶景で有名なアメリカの 「ザ・ウェーブ」 や、
                  頻繁に赤い雷と夥しい稲妻が起きる南米マラカイボ湖も
                  紹介されていました。

                   

                  マラカイボ湖の謎の雷は、『猫mix幻奇譚とらじ』
                  (田村由美著、小学館刊)11巻に登場するパ・ンダダの
                  篝火のベースになっているのかなと思いつつ読んでいて、
                  『一般人は入れない立入禁止地帯』 にその理由とか
                  説明されているかと思ったけれど、未だ謎のようです。

                   

                  謎解明に行って落雷で死にたくないので、専門家の
                  方々の調査研究に期待しています。

                   

                  『とらじ』 の方では、雷(いかづち)ねずみと、
                  仲良しの鉄のねずみが作り出したマグネッチュによる
                  現象だという設定でほのぼのしましたが、マラカイボ湖
                  の方は、落雷による死者も出ているそうです。

                   

                  ラストに紹介されている月面の立入禁止区域に関しては、
                  アメリカ国旗がなびいているのがおかしいとか、影が
                  いろいろな方向を向いているとか、コーラの瓶が写り
                  込んでいたとか、月面の石に番号が振ってあるものが
                  あったとか、アメリカの 「月面着陸疑惑」 について
                  写真付きで説明してある本も読んだことがあります。


                  この際、スタンリー・キューブリック監督の霊を
                  恐山のイタコの口寄せでお呼びして、真相を聞くと

                  いう斬新な解決策にチャレンジしてみるのもいいのでは?
                  まあ、アメリカには非現実的だと、一笑に伏される

                  でしょうけどね(笑)。

                   

                  で、冒頭の 「マンセル要塞」 ですが、ドイツ軍の
                  戦闘機をボカスカ迎撃しやがって、あまり好きでは
                  ないのですが、海に立つ姿は 『ONE PIECE』 の
                  ゾウみたいでもあり、負の遺産とはわかっているし、
                  それがあることによる問題も知ってはいるのですが、
                  撤去するには寂しい気がしてしまうのでした。


                  モノクロで重厚な写真集 「マンホールのふた(日本篇)」

                  0

                    Amazonでは手が出せなさそうな金額設定だった写真集を
                    ヤフオクで原価(2900円)以下で購入でき、その本が
                    ついに我が家に届き、日中、激暑で疲弊したテンションが
                    一気にアップしました。

                     

                    初版が1984年3月30日。林丈二さんが撮影・執筆された
                    「マンホールのふた(日本篇)」(サイエンティスト社)で、
                    私が手に入れたのは、1995年末の三刷です。

                     

                    約10年で2回重版しているというのも、写真集としては
                    めずらしく、そのニッチな内容からかと思われます。

                     

                    モノクロ写真集なので、鉄の重厚感が伝わってくるよう。
                    「マンホールは社会インフラ」 ということを、あらためて
                    感じさせてくれる記録が詰まっている一冊です。

                     

                    私が好きなデザインマンホールはありませんが、行政、
                    上下水道、ガス会社などの文字が刻まれているものも
                    多く、書体をアートとして楽しむことができます。

                    今でも、「制水弁」 の 「弁」 の字は作った職人さんの
                    遊びも見られますが、昔のマンホールは絵がない分、
                    「拓本にとりたい!」 と感じるものもありました。

                     

                    後半は、各都道府県のマンホールを紹介していますが、
                    もはや撤去・交換されてしまったと思われる雰囲気の
                    物が少なくありませんでした。まあ、初版が30年前
                    なので、劣化による危険性を考えるとしごく当然。

                     

                    ネットもない時代に、一人で本や直接その団体・組織に
                    問い合わせて、まとめ上げた著者・林氏の徹底した
                    姿勢には、“わからないのはスルー” の私からすると、
                    頭が下がるどころか、頭をマンホールに突っ込みたい
                    くらいの思いです。

                     

                    また、この本を紹介してくださった 「日本マンホール蓋学会」
                    の管理人様のおかげで、門司港から山口県へと通過
                    できそうです。この場を借りて感謝申し上げます。
                    http://sky.geocities.jp/usagigasi1f/

                     

                    (関門トンネルが2018年で60周年なので、おそらくこいつも還暦)

                     

                    おかげ様で、関門橋海底にある 「関門人道」 の
                    山口県側の出口にあった “謎のマンホール” が
                    旧建設省のマンホールだということがわかりました。


                    お金と幸せの関係を追求する 『億男』

                    0

                      川村元気さんの 『億男』(文藝春秋社刊)を読みました。
                      タイトルの通り、お金にまつわるストーリーです。
                      正しくは、お金に翻弄されると言った方がいいでしょうか。
                      実写映画化されるそうです。
                      http://eiga.com/jump/Fe37c/

                       

                      弟の借金を背負って、図書館司書とのダブルワークで
                      借金返済のためのオーバーワークな日々を過ごす一男。

                       

                      お金に振り回される日々に、妻との溝が深まり、妻は
                      娘を連れて家を出てしまい、将来が見えない毎日を
                      送っていた一男が、ひょんなことから宝くじを手に入れ、
                      3億円当選! 一気に大金をつかんだ一男は、お金の
                      使い方がわからなくなり、学生時代の友人・九十九に
                      再会します。九十九は学生時代にIT関連で起業して
                      大成功を収めたものの、会社を売却した経歴を持って
                      いることから、大金を持って人生を踏み外さない方法を
                      知っているのではないかと考えたからです。

                       

                      ところが、再会したのも束の間、九十九が宝くじで
                      当てた3億円を持って行方知れずに。

                       

                      一男は、九十九の居場所を知っている可能性がある
                      九十九と一緒に会社経営に携わっていた3人の仲間である
                      十和子、百瀬、千住らに会い、九十九の行方を追うと
                      同時に、会社売却で大金を得た彼らからお金についての
                      それぞれの考え方と生き方を知っていく展開。

                       

                      九十九は見つかるのか、そして一男は突然手に入った
                      大金の使い方、お金との向き合い方が見つかるのか、
                      サクサクと読み進められる作品です。

                       

                      お金にまつわる言葉やエピソードも盛り沢山

                       

                      作中には、一万円札の福沢諭吉の言葉をはじめ、実業家、
                      神学者、作家、経済学者などのお金に関する金言のほか、
                      お金の雑学も散りばめられています。

                       

                      中でもチャップリンの 『ライムライト』 のセリフ、
                      「人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの
                      少しのお金さ」 という言葉は冒頭にも登場し、後の
                      展開のキーにもなっています。

                       

                      また、九十九が学生時代に得意としていた落語の
                      「芝浜」 もいい感じに生きていて、私は思わず
                      「お金を九十九に持ち逃げされたという事実自体が
                      夢落ちだったらどうしよう」 と、かなりズレた感覚で
                      読み進めていました(笑)。

                       

                      『億男』 の実写映画に出演予定の高橋一生さんの
                      解説も、「芝浜」 に絡めた見事な文章で、正直
                      驚きました。

                       

                      “好きなら知りたくなる” はずなのに、知らなかった事実!

                       

                      一男が到達した境地は、本書を読むか、映画を観るか
                      していただくとして、私が感銘(?)を受けたのは
                      1万円札が1円玉と同じ1グラムという事実!

                       

                      1円玉が1グラムというのは、学校で浮力を学んだ時か
                      何かで知っていましたが、1万円札も1グラムとは。
                      縦76ミリ、横160ミリだそう。

                       

                      その豆知識を一男に披露した九十九が 「本当に興味が
                      あれば、お金をすべてを知ろうとするはずなんだ。
                      (中略)だけど君は今までそんなものを見たことが
                      ないだろうし、知ろうともしてこなかった。つまり、
                      気味はお金に興味がないんだ」 と語るのです。

                       

                      ってことは、1円玉の知識だけ入れてた私は、1円
                      レベルでお金に翻弄されているのだろうか!?

                       

                      日銀の 「貨幣博物館」 で、1億円の束を持ち上げた
                      ことがあるのに、力自慢で終わってたかも?
                      https://www.imes.boj.or.jp/cm/

                       

                      九十九理論を頭に入れ、まずは1万円札のサイズは
                      暗記してみることにしました。

                       

                      【関連記事】
                      ◇「貨幣博物館」 で1億円分持ったどー!
                      http://nureinmal.jugem.jp/?eid=2062


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