パラパラ映画のように心に映し出される 『小暮写眞館』

2017.01.09 Monday 20:42
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    『火車』『模倣犯』 など、宮部みゆきさんの小説は、
    これまでも文庫化されるとひっそり読んでいました。
    ストーリー展開の緩急や、微妙な読後感の悪さが
    クセになる作品群だと思います。

     

    気のせいか、読んでる最中は先が気になるものの
    高揚感はないのに、時間が経つと再読したくなる
    時限爆弾的な “毒のある” 小説なのかもしれません。

     

    ところが、最近文庫化された 『小暮写眞館(I・II)』
    (新潮文庫)は、謎解きはあるものの、陰惨な事件と
    呼べるものはないものの、写っているはずのないモノが
    写っている写真の謎を追っていくことで、その背景に
    ある人間ドラマが明らかとなり、どこか温かみのある作品。

     

    1月・2月で2冊ずつ、全4巻発売されるようです。
    1巻は、写真の謎解き以前に、主人公・英一の家族関係や
    友人、彼らが写真館に住むことになった経緯など、
    小出しに紹介されていき、その設定カードを1枚1枚
    めくっていくだけで、十分にスリリング(笑)。

     

    「なぜ、この家族は花菱家なのに小暮写真館なの?」
    「英一という名前なのに、なぜ親は “花ちゃん” と
    呼んでいるの?」 といった小さな謎が解消していく
    面白さがあるので、読みやすさもGOODです。

     

    そして、写っているはずのないモノの調査については、
    あえて科学的な考察をスルーして、ソレが写り込んだ
    背景や人間関係のみにフィーチャーしていて、むやみに
    スピリチュアルな方向にいかないのも、これまで
    ありそうでなかった作品かもしれません。
    そのため、ヒューマンミステリーらしい作品として
    仕上がっており、最近読んだ宮部作品の中では好きかも?

    まだ、全4巻の内、2巻しか読んでいませんが…。

     

    英一のユニークな家族やそれぞれに個性的な友人、
    怪しげな行動をとる不動産屋の従業員・垣内女史や
    英一の死んでしまった妹・風子、写真館の店先に
    出るという元店主・小暮氏の謎が、2月刊行予定の
    3・4巻で解明されるのか楽しみです。

     

    3巻が 「カモメの名前」、4巻が 「線路の春」 と
    いうタイトルになっているので、内容は全く想像が
    つきませんが、少なくとも読後感は良い作品では
    ないかと思われます。

     

    といっても、東野圭吾さんの作品でも 『白夜行』、
    宮部みゆきさんの作品なら 『火車』 が好きなので、
    私にとって読後感が悪い作品、イコール嫌いな作品
    ではないんですけどね(笑)。

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    行く方向を見失った時の処方箋 『神様のカルテ』

    2016.12.13 Tuesday 04:49
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      夏目漱石の 「漱石アンドロイド」 がニュースで
      取り上げられており、テクノロジーに対する驚嘆より
      人工知能がどこまで進化してしまうのかという恐怖
      すら感じる今日この頃です。

       

      そんな夏目漱石ですが、学生時代、前期が 『三四郎』
      『それから』『門』 の三部作を読んで、そこから
      漱石の女性観をまとめよという課題で、後期がまた
      『彼岸過迄』『行人』『こころ』 の後期三部作を
      読んで、漱石の生死観をまとめよという課題だった
      こともあり、“無理やり読まされた” 感が強くて
      未だにあまり好きとは言えません。

       

      神様のカルテ

       

      なので、漱石についてはここまでにして、漱石の
      『草枕』 を愛読書という主人公が、長野県松本辺りの
      病院で奮闘する 『神様のカルテ』(夏川草介著、
      小学館刊)について。
      私は単行本の時に読み、そのまま文庫に買い替えない
      数少ない “保存本” として時々読みます。

       

      最近、大学病院が舞台の 『ドクターX』 も放送
      されており、それと対照的な “町の総合医院” の
      リアルな現状が新鮮な気もします。

       

      書籍がベストセラーになったこともあり、櫻井翔さんと
      宮崎あおいさん主演の映画にもなったので、読んだ
      人も多いかと思われます。

       

      と言っても、私は映画の方は観ていません。

      なぜなら、主人公が夏目漱石好きという設定なことも
      あり、語り口調がやや古めかしく、その文体自体が
      安曇野の風景にマッチしていてイメージが膨らみ、
      自分なりの風景が書籍の段階で構築されてしまった
      ので、それを壊したくないから。

       

      登場人物も夏目漱石の 『坊ちゃん』 よろしく、
      「大狸先生」「古狐先生」「男爵様」「学士殿」
      といった愛称でユーモアたっぷりに表現されており、
      文体も簡潔で大変読みやすいのも特長です。

       

      また、患者さんの姓が明科、豊科、安曇といった
      松本平周辺の名がついているのも、親戚の半分が
      松本周辺に住む私にとっては親しみを覚えるのです。

       

      同じアパートに暮らす、売れない絵描き 「男爵様」、
      博士課程歴の長い 「学士殿」、ややコミュ障を自覚し
      大学病院の医局を嫌い(ドクターX?)、高齢者の
      死を繰り返し見送る主人公との関係と距離感が
      どことなくネガティブで心地よく、「学士殿」 との
      別れのシーンは私の中にそのイメージが映像となって
      出来上がっています。

       

      一方で、彼が務めている病院のメンバーは現実的で、
      人間関係においても積極的かつ個性的な面々で
      そちらもまた魅力的。

       

      夏目漱石の 『草枕』 冒頭にある有名な一節、
      「智に働けば角がたつ、情に棹されば流される。
      意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」
      という文が、現代社会に至ってもまさに真理であると
      毎度実感させられています。

       

      病院が舞台なので、当然、患者さんの死に関わる
      内容ではありますが、読後感は温かみが心に余韻として

      残る名作です。また、自分自身が外的・内的要因から
      どっちに向かってよいか、思考が停止してしまった
      時に読むと、頭の中の問題が多少整理される気がします。

       

      第1巻の 「世の中はこうやって回っているのだ。そして
      回り続けて、自分がどっちを向いているのかわからなく
      なっているのが、今の世間というものだ。こういう時、
      自分だけ回るのをやめると世人からは変人扱いされる。
      別に変人扱いされたところで私はなんら痛痒を感じないが、
      細君には迷惑をかけたくないので、とりあえず一緒に
      回ることにしている。きっと世のほとんどの人が(中略)
      いろんな不満や不安をかかえながら、ぐるぐるぐるぐる
      やっている。」 は、いい得て妙だと思うのです。
      ぐるぐるぐるぐる…。はぁ、スッキリした。

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      郷愁漂う写真集 『さようなら国鉄』

      2016.12.10 Saturday 23:13
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        年末大掃除の一環として、天袋の奥まで本格的に
        探っていたら、なんと私の部屋の天袋に詰め込んだ
        クマたちの奥にひっそりと何冊かの本が残っていました。

         

        別冊山と渓谷 『ありがとう、そして…さようなら国鉄』。
        1987年(昭和62年)3月発行。
        オールカラーで、ちょっとお高い1500円でございます。

         

        確かに山と渓谷社の本は、軽い登山やハイキング用に
        何冊か買った覚えはありますが、鉄道は記憶にございません。

         

        旅先で鉄道の写真などを撮ったり、最近はラッピング
        電車なども撮りますが、基本、鉄ちゃんじゃないので
        腑に落ちません。

         

        でも、パラパラと見ていたら、すでに廃線なった路線、
        民営化で廃止となる路線、青函航路など、余すところなく
        当時の車両や、その電車が走っている風景が、その
        地域らしい風景と共に撮られていて、写真1点1点に
        「この路線のベストアングルはココ!」 といったような
        撮影者の “鉄道愛” が感じられるのでした。

         

        定番ですが、御茶ノ水駅の総武線・中央線、その奥に
        丸の内線が走っている写真は好きかも?
        今よりもグリーンが濃い103系山手線も懐かしい記憶。

         

        各駅の昔の風景が写っている古写真特集や、鉄道唱歌
        66番まで、さらには付録 「国鉄全線ジャンボマップ」
        も付いていて、国鉄の歴史的記録を網羅した一冊と
        なっていました。

         

        丸いおめめの東海道新幹線の雄姿に「速い! 速い!
        東海道線のエースは日本が世界に誇る新幹線」 と
        キャプションが入っている一方で、主に北海道の
        石北本線や釧網本線、士幌線などの蒸気機関車には
        郷愁が感じられます。

         

        映画 『鉄道員(ぽっぽや)』 のロケ地となった
        根室線・幾寅駅や、同じく高倉健さん主演だった
        『駅 STATION』 の留萌線も廃線となるようで、
        どういう状況と心境から購入した本なのかは不明
        ですが、鉄道の歴史を語る一冊として今後も保管
        したおくことにしました。

         

        鉄道に興味がない人でも、日本全国の特徴的な
        風景や、おそらく一番その路線が美しく見える
        季節での写真が散りばめられているので、
        風景や当時の生活感も伝わってくる写真集として
        オススメの一冊です。

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        ライトに 『上石神井さよならレボリューション』

        2016.11.17 Thursday 04:54
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          漫画の舞台にはなるものの、ほとんど小説の
          タイトルにはならない西武戦沿線。

           

          『上石神井さよならレボリューション』(長沢樹著、
          集英社文庫)は、そうした不遇な西武戦沿線を
          舞台にした青春ミステリー。

           

          5本の短編が入っており、タイトルの西武新宿線駅
          だけでなく、西武国分寺線など、西武線沿線での
          野鳥撮影を行う中で出会った小さな事件を解明する
          ストーリーです。

           

          全て、何かが “消失” したり、“消失” と錯覚
          させられる “消失” テーマで、現場の図解入り。

           

          推理物としてはライトな内容ですが、登場人物が
          それぞれに個性豊かで、そうした学園生活や生物部が
          描かれていて、手軽に読めます。

           

          生物部と言っても、野鳥観察&撮影がメインなので
          武蔵野の自然を生かしている作品とも言えましょう。

           

          それぞれ沿線でも舞台となる場所は異なり、1本は
          神奈川県が舞台のものもあるのですが、タイトルに
          上石神井を選んだのは、おそらく彼らの学校が
          上石神井にあるという設定だからかと思われます。
          リアル上石神井近くには、早大学院(男子校)しか
          ないけどね(笑)。

           

          現在、続編も書かれているようですが、タイトルが
          どうなるのが気になるところです。

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          教科書掲載の名作 『一切れのパン』 でも記憶多々

          2016.09.28 Wednesday 23:10
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            昨日のブログで 『一切れのパン』 のことに触れた割に、
            覚えていたのは、神父さんだかがくれたのがパンではなく、
            実は木片だったという結末のみ。

             

            国語の教科書に載っていて、かなり感動した覚えがある
            のですが、詳細は微妙に曖昧でした。

             

            たしか、戦乱の中、逃亡中の主人公が神父さんだったか、
            牧師さんを助けて、その人から逃亡中で空腹になったら
            このパンを食べなさいと、布に包んだ固いパンをもらい、
            苦しい時も 「食べ物はあるから」 という安心感から
            パンを食べることはせず、頑張って逃げ切り、最後に
            包みを開けてみたら木片だったという内容だったような。

             

            そこで、ネットチェックしてみたら、やはりこの作品に
            感動して、よく覚えているという人たちが意外と多い
            ことを知りました。

             

            パンという言葉があったせいか、勝手にキリスト教の
            神父か牧師と思い込んでいましたが、戦乱のハンガリーが
            舞台となっていることから、恩人はユダヤ人のラビで、
            さらに主人公が彼を助けたのではなく、彼がユダヤ人
            だということを黙っていてあげたという展開でした。

            宗教自体が丸ごと違ってお〜る!!!

             

            どうやら、『ウイリアム・テル』 同様、今回は
            『レ・ミゼラブル』 と混在したストーリーを脳内で
            捏造していたようです。

             

            う〜ん、「捏造」 と言ってしまうとネガティブワードに
            なってしまうので、「アレンジ」 と呼ぶことにします。
            自己欺瞞でもなんでも、それでいいのだ!

             

            え? そんなんで取材の内容は大丈夫かって?

            もちろん、ノープロブレム!

            ICレコーダー様様がありますもの。

            結構、聞き直してみると、メモだけで書いたベタ打ちと

            内容違ってるんだよね、はっはっは!

            ICレコーダー様がある限り、取材情報はそこそこ正確な

            記事に仕上げられているようです。開き直りっ!


            【関連記事】
            ◇白い風船のように消えた空想力
            http://nureinmal.jugem.jp/?eid=552
            ◇『掌の小説』⇒桜⇒『BOSSのCM』
            http://nureinmal.jugem.jp/?eid=511
            ◇『ウイリアム・テル』 と 『おやゆび姫』
            http://nureinmal.jugem.jp/?eid=2930

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            加賀恭一郎の謎も一つ解ける 『祈りの幕が下りる時』

            2016.09.24 Saturday 23:49
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              東野圭吾さんの 『祈りの幕が下りる時』(講談社文庫)
              を読み終えました。さすが、吉川英治文学賞受賞作だけ
              あって読み応えがあります。

               

              『新参者』『麒麟の翼』 に続く加賀恭一郎シリーズの
              日本橋編三部作の完結版とも言えます。

               

              明治座に幼なじみの演出家を訪ねた女性が殺され、
              その近くでホームレスの焼死事件も発生。
              2つの事件の関連を追う内に、なんと加賀恭一郎の
              母親の死ともつながるある物も発見され、彼の母が
              どういう人生を生きたかが明かされる必読の書。

               

              なぜ、演出家の母親らしき人物を受け入れた介護施設に
              働く女性が殺されなければならなかったのか、同時に
              いくつもの名を持つホームレスは一体誰なのか、迷路に
              人影を見つけてそこに行くと、その人影が消えていて、
              行き止まりになっている―そんな感じでグイグイと
              続きが知りたくなる展開です。

               

              それらの事件の原因となった事件は、『白夜行』『魔球』
              に流れる貧しさと哀しさ。
              『魔球』 が一番近いかもしれません。

               

              同時に、原発の作業員も関係してくることで、原発を
              支える底辺の人たちにも触れられています。
              「原発はねえ、燃料だけで動くんじゃないんだ。
              あいつは、ウランと人間を食って動くんだ。人身御供が
              必要なんだよ」 という元作業員の言葉が印象的でした。

               

              『麒麟の翼』 では、製造業にありがちな労災隠しを
              取り上げたように、こうした理不尽な環境で
              働かされる人たちを、人気作家がその存在を
              フィーチャーしてくれるのは、ありがたいことだと
              思います。社会インフラを支える人たちを意識する
              ことで、日々の快適な生活や “普通の生活” と
              呼んでいる毎日のありがたみを再認識できるからです。

               

              ラストの、恭一郎の母について書かれた、ある人物の
              手紙は、東野圭吾さんらしい浪花節調なのはわかって
              いるのに、思わず涙してしまいました。

               

              また、『新参者』『麒麟の翼』 と並べた場合、
              この作品はテレビより映画向きな展開。
              せっかくなので、2017年夏(七夕シーズン)に上映
              してくれるといいですね。読了した方には、ご理解

              いただけるかと思われます。

               

              【関連記事】
              ◇加賀恭一郎の新章突入といった感じの 『新参者』
              http://nureinmal.jugem.jp/?eid=361
              ◇まさしく傑作 『麒麟の翼』
              http://nureinmal.jugem.jp/?eid=875
              ◇晴勤雨読
              http://nureinmal.jugem.jp/?eid=2937

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              スピーチライターという仕事 『本日は、お日柄もよく』

              2016.09.13 Tuesday 23:29
              0

                交通費節約のためにも、一度に数カ所の取材が
                できるようなスケジュールにしている分、待ちの
                時間が発生してしまいます。

                 

                周辺に寺社仏閣など、何か観光的要素があるエリアは
                そうした場所に行って遊んだり、隣町くらいだったら
                足を伸ばして散策に勤しんでおります。
                時間潰しも仕事の内…。

                 

                とはいえ、駅から離れた “純住宅街” の場合は
                (とくに高台)駅に戻るのも面倒なので読書。
                今回は、現地の書店で購入した原田マハさんの
                『本日は、お日柄もよく』(徳間文庫)を読みました。

                 

                装丁のデザインが、お祝いの熨斗モチーフで、何となく
                気に入ったのです。またしても本をジャケ買い。
                http://www.tokuma.com/bookinfo/9784198937065

                 

                日本ではあまり聞きなれないスピーチライターという
                仕事を取り上げたライトな小説です。
                ある結婚式に始まり、別の結婚式で終わる作品。

                 

                内容については、裏表紙の説明程度にしておきますが、
                製菓会社の総務で働く主人公・二ノ宮こと葉は、
                幼馴染の厚志くんの結婚披露宴の来賓スピーチ中に
                居眠りして、スープに顔面ダイブという醜態を晒して
                しまいますが、同時にその結婚披露宴がキッカケとなり
                伝説のスピーチライター・久遠久美と出会い、
                その弟子になることに。
                こと葉は、ちょうど同僚の結婚披露宴で、スピーチを
                頼まれていたのです。

                 

                同僚の結婚披露宴でのスピーチは成功。
                そのスピーチによって、総務で地味に働いていた
                こと葉は、新たに立ち上がった広報戦略室に異動。
                さらには、野党候補の参謀的立場になるため退社、
                なんと政権交代をバックアップする役割に…と、
                テンポよくストーリーが進みます。

                 

                ちょっと 『フォレスト・ガンプ』 の原作に似ている
                気もしました。『わらしべ長者』 的な要素も。

                 

                文体は、主人公のこと葉の一人称の軽い口語調、
                作品の見せ場となるスピーチ部分は読者に語り掛ける
                ようなスタイルとなっていて、メリハリもあります。

                 

                また、読む人によって、響くところ、面白いところが
                かなり違うかもしれません。それが本作の魅力かも?

                 

                たとえば、失恋から新しい恋へとつながるラブストーリー
                であり、天才スピーチライターたちによって育てられる
                シンデレラストーリーであり、タイトルからも予想できる
                ラストは大団円となるサクセスストーリーでもあり、
                いろいろな視点で読めると思います。

                 

                どちらにせよ、言葉の重さ、言葉が人を動かす力を
                持っていることを考えさせられる一冊です。

                 

                日頃、原稿書きで言葉を扱う仕事をする身としては、
                言葉一つひとつの選択や、同じエピソードでも展開
                次第で人の心を揺さぶる力を持つことをあらためて
                感じた作品でもありました。

                 

                ちょっと都合良過ぎるじゃ〜ん!

                 

                ただ、私としては、それぞれの感動スピーチに
                使われる、お涙ちょうだい的なエピソードが都合よく
                用意され過ぎているのがちょっと気になりました。

                 

                ひとつだけ例に挙げると、花嫁が失恋して元気のない
                友人のために、挙式前の忙しい中、ブーケトス用の
                ブーケを2つ作って、1つをこと葉の家に自ら
                届けてくれるといったようなエピソード。微妙…。

                 

                また、主人公の祖母が著名な俳人というのも、やや
                出来過ぎな感が。DNAと育った環境ありきな気がして、
                感情移入しきれないものがありました。

                もしかすると、私が文才がないひがみから来ている

                かもしれませんが…。

                 

                あまり、深く考えず、主人公の環境の変化や気づきを
                楽しみながら読む距離感がベターかもしれません。

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                マイナビ2018オフィシャル就活BOOK〜内定獲得のメソッド

                2016.09.07 Wednesday 23:13
                0

                  一足早く、「マイナビ2018オフィシャル就活BOOK」 がすでに

                  出来上がっていました。

                  就活に必要な 「自己分析」 や「エントリーシート」 などの

                  各メソッドが、体系的にわかりやすく書かれています。

                  何冊か出ているのですが、その中で必読ともいえるのが、

                  この「業界&職種研究ガイド」。

                   

                  理系の人はある程度、学科やゼミを選んだ段階でそれなりの

                  方向性があるかとは思いますが、文系の人はついついCMや

                  ネットで有名な企業だけに目が行ってしまうもの。

                   

                   

                  この本は、各業界の大手企業を中心に、業界の特徴、市況、

                  業界の将来性、そしてそれぞれの業界ならではの職種や

                  どういった業務があるかがまとめられています。

                   

                  転職希望の人でも、たとえば営業とか、経理とか、職種は

                  ある程度決まっていても、前職と同じ業界にこだわらないので

                  あれば、今後伸びそうな業界へシフトする際に有効かも?

                   

                  就活関係で、こういった業界と職種に関する書籍は多数

                  刊行されますが、中でもこの本はGOODだと思いました。

                  エントリーの前段階として、また就職活動のスケジュールを

                  検討する上でも、この本である程度、自分が狙いたい業界や

                  職種でを絞っておくと、短期決戦でも効率的に就活できます。

                   

                   

                  「マイナビ2018オフィシャル就活BOOK」 は、カテゴリーが

                  いろいろありますが、オススメのもう一冊はコレ!

                  この 「面接担当者の質問の意図」 はそれぞれ質問の例が

                  挙げられており、その質問を学生に投げかけることで、

                  面接官は “その学生の何を知りたいと思っているのか” が

                  説明されています。その質問自体の回答よりも大事なことが

                  隠されていることも少なくない面接。面接官側の視点から

                  見ることで、どういった態度・表情・言葉遣い・回答を

                  すればいいのかが、つかみやすくなると思います。

                   

                  もちろん、そのためには自己分析をきちんとやっておくこと、

                  どんな質問にも柔軟に対応しようという気合も大事ですが…。

                  また、この本を読んでおくことで、自分が面接官から投げて

                  もらいたい質問につながる、エントリーシートの書き方が

                  見えてくるのではないでしょうか。

                   

                  「マイナビ2018オフィシャル就活BOOK」 を全部立ち読みして

                  来ましたが(閲覧自由だったので…笑)、この2冊は自信を

                  持ってオススメできると思いました。

                   

                  【関連記事】

                  ◇中立・客観的な情報収集には 『就職四季報』
                  http://nureinmal.jugem.jp/?eid=2738

                  category:書籍 | by:まるたん | - | - | -

                  時々ヒヤリとする 『コンビニ人間』

                  2016.08.23 Tuesday 05:11
                  0

                    第155回芥川賞受賞作品 『コンビニ人間』(村田沙耶香著、
                    文藝春秋刊)を読みました。
                    内容以前にまず、装丁デザインが気に入ったからです。
                    う〜ん、でも帯はイマイチかな?

                     

                    ネタバレにならない程度にということで、帯に書かれた
                    簡単なあらすじを紹介すると、「36歳未婚女性、古倉恵子。
                    大学卒業後も就職せず、コンビニのバイト18年目。
                    これまで彼氏なし。(中略)ある日、婚活目的の新入り男性、
                    白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと
                    突きつけられるが…」 とありますが、この白羽氏は家族に
                    借金して、家も仕事もなく、コンビニバイトすらさぼり、
                    口だけ達者という、ひと言でいえば単なる“だめんず”。

                     

                    それに対し、主人公の女性はアスペルガー症候群とか、
                    発達障害らしき人物で、ある意味、共に “普通の人”
                    ではないという共通点があります。

                     

                    とはいえ、彼女は幼少時代からの経験や、家族の反応を
                    通して、自分が “普通の人” でないことに気づいており、
                    周囲の人を擬態することで、コンビニという小さな社会で
                    つつましく生きているのでした。

                     

                    マニュアルがあるコンビニが、“普通の人” らしく擬態

                    するには、どう対応すれば良いかわからない彼女にとって、

                    一番の安地なのです。

                     

                    自分で判断する必要が発生する事態においては、幼少期
                    のエピソードとして、友達同士のケンカを止めるのに

                    スコップで殴ったり、大人になってからのエピソードでは

                    妹が赤ちゃんを泣き止ませるため抱く姿を見て、静かに

                    させるだけならケーキ用ナイフがあるのに…という、

                    思わずヒヤリとする表現もあって、そこらへんが

                    芥川賞らしい作品と言えましょう。

                     

                    姉を気遣う主人公の妹や、発達障害が治ることを願って
                    いる親、そして何となく主人公に不気味な違和感を感じ
                    距離を置いてつきあう友人など、周囲の反応もそれぞれで
                    主人公視点で進められる本作において、ある時は普通の
                    世界の価値観が描かれていることにほっとしたり、ある時は

                    周囲が彼女に浴びせる言葉を残酷に感じたりもします。

                     

                    そんなコンビニでしか生きられない主人公が、なんと
                    だめんず・白羽によって、長年勤めたコンビニを辞める
                    ことになる顛末も、白羽の “縄文時代論” 同様、奇天烈な

                    理由で当然共感できませんが、作品としてはこの展開で

                    いいのか?

                     

                    芥川賞作品は、結構、人間に内在する狂気を扱った
                    ものが多い中では、意外と普通の人に近い主人公と
                    “ありがちな” だめんずのストーリーでした。

                     

                    ただ、コンビニバイトの仕事内容や、コンビニ内の様子は

                    漫画 『ニーチェ先生』 以上に臨場感があります(笑)。

                     

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                    ◇介護テーマの 『スクラップ・アンド・ビルド』
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                    ◇松駒くんのひと言が絶妙な 『ニーチェ先生』
                    http://nureinmal.jugem.jp/?eid=2026

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                    千代の富士 「不撓不屈」

                    2016.08.03 Wednesday 23:14
                    0

                      九重親方こと、元横綱・千代の富士が亡くなってしまいました。

                      相撲はあまり好きではありませんが、千代の富士は好きでした。

                      体も力士としてはそれほど大きくなく、腕の脱臼という爆弾を

                      抱えつつも “一人横綱” としての孤高の存在が何とも…。

                      脱臼をカバーするために鍛えた筋肉や、まわしを取られた時の

                      切り返しなど、まさにウルフでカッコよかった。

                       

                      あまりに好きだったので、私としてはめずらしく写真集まで

                      買ってしまったほど。

                      『不撓不屈〜1045勝への道のり』(日之出出版)という

                      タイトルなのですが、この写真集のおかげで 「不撓不屈」 と

                      いう言葉を知りました。

                      「たまわず、くっせず」 という意味で、まさに千代の富士の

                      土俵人生そのもの。とくに 「たわまず」 がいい!

                       

                      それまで座右の銘の四字熟語は 「臥薪嘗胆」 だったのですが、

                      その時から現在に至るまで、一位の座は 「不撓不屈」 と

                      なりました。たわみっぱなしの私ですが、気持ち的には

                      そうありたいと思っています。

                      白鵬も好きだけど、私にとっては、やっぱり永遠の横綱は

                      千代の富士だなぁ。ご冥福をお祈りいたします。

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